これまでの通信回線はFAXと共用だったので、学校の日常業務が動いている時間は長時間回線を占有するパソコン通信だと他の人の迷惑になってしまう。このため、東京NOCとのゲートウェイも夜間に限られていた。第3期は、ISDN1回線を通信専用に確保したことで、外線からのアクセスに時間帯制限がなくなり、またISDNデジタル回線のTA(ターミナルアダプタ)を用いることで、ゲートウェイの安定度と転送速度が格段に向上した。
第3期の特徴 | |
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トピック | ゲートウェイのISDNデジタル化と専用アナログ外線の確保 |
外線接続 | 通信用ISDN回線1回線 |
LAN環境 | LocalTalk(PhoneNet)によるデイジーチェーン接続 4芯電話用フラットケーブル 1階職員室〜2階教室部分まで |
クライエント数 | 10+PhoneTalkアダプタ |
サーバー数 | 1(FirstClass Server) ISDN/TA×1、アナログモデム(28800bps)×2 |
ネットワーク図3 |
ゲートウェイ用のISDN/TA(ターミナルアダプタ)とそれに28800bpsのアナログモデムが2台つながっている以外、基本的構成は第2期と変わっていない。2台のアナログモデムは、学校外からFirstClassへアクセスするための着信専用に用いる。
ISDN回線は通常1回線で2チャンネルが使える。最近のTAにはアナログの電話端子が2口付いているものが多くなったが、例えば、ここに電話とFAXをつないでおくと、電話が通話中でもFAXの送受信ができる、という訳だ。TAが1チャンネルを使っている時は、アナログポートは1つしか使えないが、TAは東京NOCとのゲートウェイにしか用いないので、ほぼ一日中、外線からのアクセスに2チャンネルを提供できるようになった。
図 ISDN回線で使用するTA(ターミナルアダプタ) アナログ回線よりも高速で安定した接続状態が得られる |
外線を2チャンネル確保することで大きく変わったのが、教員・保護者・児童の家庭からの学校電子会議室アクセスだ。この頃から中川西では試験的に家庭でMacintoshとモデムを持っている家庭にアクセスファイルを提供し、学校の電子会議室に参加してもらうことを始めた。電子会議室には保護者と教員のための「井戸端会議」が設けられ、さらに、同時期メディアキッズでも全国の保護者と教員・スタッフが集う「父母の部屋」が大盛況になった。父母の部屋は、この後「Mediakids Cafe」として拡大していくことになる。
学校ネットワークで見落とされがちなのは、保護者の存在や地域である。学校ネットを、教師と児童生徒の勉強のための閉じたネットワークとするか、それとも、保護者や地域の人々も気軽に参加できる広場とするか、どちらのスタンスを取るかは、学校側の方針によるだろう。もし、後者のための環境を整えるならば、学校にある程度の着信用回線と設備を用意しなければならない。ISDN回線+TA+アナログモデム2台の組み合わせは、着信設備としては最小限のユニットだ。中川西の場合は試験的に始めたもので、残念ながらまだ全家庭に配る予定はなさそうだ。ここ数年で家庭でのパソコン普及率が大きく伸びても、まだまだ当たり前ではないし、もし全家庭に、となると着信回線を大幅に増やす必要が出てくるからである(これについては別に解決法もあるのだが)。
着信用に一般公衆電話回線ではなくISDN回線を引く理由だが、デジタルのTA同士なら通信状態が比較的安定しており、途中で通信が途切れたりする心配がないこと、将来インターネットのリモートルータなどを導入する際にアップグレードが容易なこと、ISDNは1回線で2チャンネル確保できるので一般電話回線を2回線契約するよりも基本料金が安いこと、が挙げられる。ただ、いくら基本料金しかかからない着信専用回線とはいっても、現状では実験プロジェクトでもない限り、学校予算で複数の回線を契約するのは難しいかもしれない。この点に関しては、教育機関に対して電話料金を割り引くようなサービスがあってもいいように思うが、どうだろう。